今日の日記

2002年8月28日
夢を見ていた…

懐かしくもない、ただ残酷な夢を。

その夢が開けた時、第二の人生が始まった…
古き名を捨てて…
私は矢継を名乗った。

心に残った傷…
身体から消えた傷…

警戒心だけが強まり、
人を近づかせる事が出来なかったあの事…
人を寄せ付けなかった…あの時。

以前、図書室で…新しく来た先輩と知り合った。
武道を…されているという。
だが、相手の顔を見るまでに…

警戒心を露にしてしまった…
醜い自分を…其処に晒した。
後から考えても…どうすることも出来ない。
ただ、願わくば…
今後、そのような事態を回避したいと思うだけだ…

今は心を閉じる…
何も見えないように心を…
ただそれだけでよかったと…
そう思いたかった…少なくとも、たった今は…

けれど、それは出来ない。
心を閉じることは許されない…
亡くなった父に…そして今まだ私を案じてくれている母に…
私を受け入れてくれている私の唯一の家族であり、祖父母でもあるあの二人に…
それは、失礼な事だと思うから…

私は、極々一般の家族というものを知らない。
人は全て…醜いものだと思っていた。

けれど…矢継と名乗り始めてからは…
それは違うって思えてきた…
人は…暖かいものだという事に気付いた…

私は気が付くのが遅かったのだと思う…
きっと…そう、きっと…


神条…昔の名前を思い出した…

どうして今ごろ…?
そんな名前を思い出したのだろう?
苦しくて…淋しい思い出が、私の中を駆け巡る…
暗くて泣き叫んだあの日が…私の中に蘇る…

でも今は…そうではないから…
名前を思い出しただけ…そんなことを思い出しただけ…
そう、同じことの繰り返しではないという事が…
どんなに私を勇気付けるのであろうか…?
どんなに…私にとって嬉しい事であるのだろうか…?

その嬉しさが、こんなにも心休まるのを知ったのは…きっとこれが初めてなのかもしれない…

今はもう肉親の顔は覚えていないから…
不思議なもので、人は忘れる事ができる…
それは良い意味でも悪い意味でも…
過去の苦しみから逃げるためにも、そして、解放されるためにも…
私は、解放されたのだろうか?
あの頃、ずっと汚い言葉しか聞かなかった…
あの頃から…私は自らを解放する事が出来たのだろうか?

決して…逃げではなく。


昔…誰かに聞いたことがある。
【人は強いのか?それとも弱いのか…?】と。
ある人は…
 【人は強い】と言った。
ある人は…
 【人は弱い】と言った。

私はその意見の両方に頷けた…
異なった意見。異なった…論点。
精神面から…そして、肉体面から…
【人は忘れる事ができるから…強いんだよ】
嫌な事を…忘れて、忘れたからこそ前を見て立ち上がっていくことができると…
其れは、人の強さ…?
でも其れで私は助かっている。
いや、助かった…
囚われすぎていた過去から…
光が…差し込まれていたのだから。

今日もまた…連絡が来た。
この前…明君と会ったあの前日…
お葬式が行われた…
あの日を境目に…私はまた一人となった…

私を引き取ってくれた…矢継 楓…おばあ様が…お亡くなりになられた…
私は…喪主として其処にたった…。
ただ…一人になりたかった…
そのことを受け入れる事は出来たものの…
どうすればよいのかわからなかった…

まだ若造なんだなぁ〜って、つくづく思って…少し嫌だった…。

後見人を失った事で…その書類を学校側に提出しに行くことになる…
きっと、すぐに受理されるだろう…。
後ろ盾がなければ…未成年は立つ事が出来ないから…

今此処に…あの人たちが居なくて良かったと思うのは…最大の親不孝者かも知れない…
肉親が…私を施設へ置いて、消えた人たちが…
今年4月、事故で亡くなったのは風に聞いた…。

矢継の家は…私には大きすぎて…
どうしたら良いのかわからない…
けれど、他に身寄りがなかったのはお互い知っていたから…。

31日付けで退学になり…その後は隠居生活…とはいかないものの、
きっと、財産整理や…その他諸々で過ごしていく事になるだろう…

また…電話が鳴った…
早く戻ってきなさいというのか…
それとも…?
推測しか出来ない…取ることが怖くなった…
電話が鳴るたびに肩を震わせている。
もう、苦笑するしかない…


今はまだ大丈夫…
まだ、ちゃんと明日に身体を向けていられる。
身体だけじゃなく、心も…
あと、4日…
出来る限りのことをしよう…
私自身を偽らないように、そして…
出来る限りの人に、手紙を出していこう…


・・・・・・どこか遠くで、携帯の着信音が鳴っている。

そして私は目が覚めた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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